うつ病とは
うつ病は、長期間にわたって気分の落ち込みや無気力感が続き、日常生活に深刻な影響を与える精神疾患です。単なる一時的な「気分の落ち込み」とは異なり、持続的に心身の疲労を伴うことが多く、放置すると症状が悪化するリスクがあります。うつ病の主な症状には、気分の低下、興味や喜びの喪失、疲労感、集中力の低下、睡眠障害、食欲不振、強い罪悪感などが含まれます。原因はストレス、遺伝、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなど、複数の要因が組み合わさることで発症することが多いです。診断は医師による問診を通じて行われ、必要に応じて血液検査などが実施されます。治療には抗うつ薬による薬物療法とカウンセリングや認知行動療法などの心理療法が用いられます。早期に適切な治療を受けることで、症状の改善や再発予防が期待できます。
うつ病の原因
うつ病は、一つではなく、複数の要因が絡み合うことで発症すると考えられています。
ストレス
仕事や家庭内の問題、人間関係のトラブルなど、長期間にわたる精神的なストレスは、うつ病の主要な誘因です。特に、職場での過労や重圧、いじめや孤立感は、発症リスクを高めます。
遺伝的要因
家族内にうつ病の既往がある場合、遺伝的に影響を受けやすくなるとされています。特定の遺伝子がうつ病の発症に関連している可能性が指摘されていますが、環境的要因も強く影響します。
脳内化学物質のバランス
脳内の神経伝達物質、特にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのバランスが乱れると、気分や感情のコントロールが難しくなり、うつ病を引き起こす要因と言われています。
ホルモンの影響
妊娠、出産、更年期などのホルモンバランスの変化は、特に女性においてうつ病を引き起こすことがあります。甲状腺機能の低下など、ホルモン分泌の異常も原因の一つです。
性格的要因
完璧主義や責任感が強い性格の人、また自己評価が低く、他人の期待に敏感な人は、ストレスをためやすく、うつ病にかかりやすい傾向があります。
身体的疾患や薬物
慢性的な病気や、心筋梗塞やがんといった重大な病気が引き金となって、うつ病が発症することもあります。また、特定の薬物の副作用としてうつ病が生じる場合もあります。
うつ病の症状(初期症状)
- 何をしても楽しくない
- 興味がわかない
- ずっと疲れが抜けない
- 休んでも疲れが取れない
- 朝起きるのがつらい
- 食べ物の味がしない
- 食欲がわかない
- 頭がぼんやりして何も考えられない
- 集中できない
- 何をしてもすぐに手が止まってしまう
- 自分には価値がないように思えてすごく落ち込む
- 何もかも面倒に感じて簡単なことも手につかない
- ずっと胸が苦しくて気分が沈む
- 夜寝付けなくて何度も目が覚める
- 死にたいって考えが頭から離れない
など
うつ病になりやすい人(傾向)
うつ病になりやすい人(傾向)は、以下の通りとされています。
真面目で責任感が強い人
仕事や家事を完璧にこなそうとする人や、自分に厳しく、他人の期待に応えようとする人は、ストレスを抱えやすく、うつ病になりやすいと言われています。
自己犠牲的な人
自分のことを後回しにし、他人のために無理をしてしまうタイプの人は、疲れやストレスが積み重なり、心身が限界に達することがあります。
感情を抑え込みがちな人
不安や悲しみ、怒りなどの感情を表に出さず、内に溜め込んでしまう人は、心の負担が大きくなり、うつ状態に陥りやすくなります。
過度に心配性な人
将来や周囲の評価に対して強い不安を抱き、物事を悪い方向に考えがちな人は、ストレスやプレッシャーに弱く、うつ病にかかりやすい傾向があります。
人間関係に敏感な人
他人の目や評価に対して敏感で、人間関係のトラブルにストレスを感じやすい人も、うつ病を発症しやすい傾向があります。
うつ病の検査・診断方法
うつ病の検査・診断は、主に医師による問診を中心に進めます。問診では、患者様の気分や生活習慣、ストレスの原因、過去の病歴などを詳しく確認し、うつ病の典型的な症状(気分の落ち込み、興味喪失、疲労感、睡眠障害など)を把握します。さらに、「ベックうつ病自己評価尺度(BDI)」や「ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)」といった自己評価スケールを使用します。また、他の疾患を排除するために、血液検査や甲状腺機能のチェックなどの身体的検査も行います。
うつ病の診断には「DSM-5」などの精神医学の診断基準を用い、特定の症状が2週間以上続いた場合にうつ病と診断されることが一般的です。
うつ病の治療方法(治し方)
薬物療法
うつ病治療の中心は、抗うつ薬の使用です。抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンのバランスを調整し、気分を安定させます。主要な薬の種類には以下があります。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
副作用が比較的少なく、一般的に第一選択薬として用いられます。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SSRIが効かない場合や、特に疲労感や倦怠感が強い場合に使用します。
三環系抗うつ薬
古いタイプの抗うつ薬で効果は高いが、副作用も多いため、他の薬が効果を示さない場合に処方します。
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
眠気や食欲不振が見られる患者様に使用することが多いです。
抗うつ薬の効果が現れるまでには通常2〜4週間かかるため、途中で治療を中断せず、医師の指導に従って服用することが重要です。また、効果が現れても急に薬をやめると再発のリスクが高まるため、医師と相談しながら少しずつ減薬する必要があります。
心理療法(カウンセリング)
心理療法は、患者様の考え方や行動パターンを見直し、うつ病を軽減する手助けをします。代表的な方法には以下があります。
認知行動療法(CBT)
患者様が抱えているネガティブな思考パターンを特定し、それを前向きな考え方に変えていくものです。患者様は思考や行動を記録し、医師やカウンセラーと共に新しい対処法を学んでいきます。
対人関係療法(IPT)
人間関係のトラブルやストレスが原因でうつ病が悪化している場合に、患者様が関係を改善しやすくするための方法を指導していきます。
マインドフルネス認知療法(MBCT)
過去のことにとらわれず、今この瞬間に集中することを学び、ストレスや不安を軽減することを目的としたものです。
心理療法は、薬物療法と併用することで効果が高まることが多く、特に軽度から中等度のうつ病患者に対して有効です。
環境調整
環境や生活の変化がうつ病を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。そのため、患者様が必要に応じて職場の環境調整や休職・休学を検討することがあります。一時的に仕事や学業から離れることで、心身の負担を軽減し、治療に集中できる環境を整えることが大切です。
また、家庭や職場でのサポートも重要で、家族や友人、同僚が理解し協力することが、患者様の回復を助けます。家族療法などを通じて、周囲の人々にも治療への理解を深めてもらうことが有効です。
生活習慣の改善
うつ病の回復には、規則正しい生活習慣が重要です。特に、以下の点が推奨されます。
適度な運動
散歩や軽い有酸素運動は、ストレスを和らげ、気分をリフレッシュさせる効果があります。
睡眠の改善
うつ病は睡眠に悪影響を与えますが、規則正しい睡眠時間を保つことが回復に役立ちます。
食事のバランス
栄養バランスの良い食事は、心身の健康を保つために不可欠です。
電気けいれん療法(ECT)
重度のうつ病や、薬物療法や心理療法が効果を示さない場合には、電気けいれん療法(ECT)を検討します。これは、脳に電気刺激を与えることで症状を緩和させる治療法で、入院治療の一環として行います。電気けいれん療法が適応となるような場合には、連携する医療機関をご紹介いたします。
うつ病に関するよくある質問
うつ病は誰でもなる可能性がある病気ですか?
うつ病は、年齢や性別、職業を問わず誰でも発症する可能性があります。特に、ストレスの多い生活を送っている人や、身体的・精神的に負担がかかる状況に置かれている人は発症リスクが高まります。また、家族にうつ病罹患者がいる場合もリスクが高いとされています。
うつ病はどれくらいの期間で治りますか?
うつ病の治療期間は個人差があります。軽度のうつ病であれば数ヶ月で回復しますが、重度の場合は1年以上かかります。症状の回復後も再発を防ぐため、暫く治療を続ける必要があります。
うつ病は治療しなくても自然に治りますか?
うつ病が自然に治ることもございますが、治療を行わない場合、悪化し、長引く可能性が高くなります。少しでもおかしいなと感じましたらお早めにご相談ください。
うつ病の治療を続けているのに効果が感じられません。どうすればいいですか?
うつ病の治療には時間がかかることもあり、すぐに効果を感じられないかもしれません。また、薬の種類や量が合わない場合もあります。しかし、自己判断で薬の中断や量の変更することは大変危険です。気になることがありましたら医師までご相談ください。
うつ病と普通の落ち込みはどう違うのですか?
通常の落ち込みは一時的なもので、時間が経てば自然と回復します。しかし、うつ病は数週間以上にわたって持続し、日常生活に大きな支障をきたします。倦怠感、集中力の低下、食欲不振、不眠などの身体的な症状が現れるのもうつ病の特徴です。
うつ病は再発しやすいですか?
うつ病は再発のリスクがあります。特に改善後も半年から1年は再発が高いと言われ、初めてうつ病を発症した人のうち約半数が再発すると言われています。特に複数回うつ病のエピソードがある方は再発率も高いと言われています。再発を防ぐためには、治療終了後も過度なストレスは避け、一定期間、フォローアップと定期観察のため医療機関を受診しましょう。
うつ病になったら学校や仕事は休まなければなりませんか?
症状の程度によりますが、うつ病が重い場合は、休学や休職を推奨することがあります。
うつ病の人に対して「頑張れ」というのは良くないですか?
うつ病の人に対して「頑張れ」ということは、逆にプレッシャーになります。うつ病の人は既に心身ともに限界に達していることが多いため、無理に励ますより、そっと寄り添い「何かできることがあったら教えてね」のように言葉をかける方が良いでしょう。
うつ病は年齢により発症しやすい時期がありますか?
うつ病はどの年齢層でも発症しますが、特に思春期から40代にかけての人が発症しやすいとされています。また、思春期とともに仕事や家庭のストレスが重なる中高年層に発症が増えるとされています。